カミーノ日記2019:スペイン巡礼、フランス人の道780km + 120km

2019年4~5月、カミーノ・デ・サンティアゴ、フランス人の道を歩いてきました。ブログ内の情報はすべて2019年5月~6月時点のものです。

【Day 2: Roncesvalles→Zuriáin (- Obanos) 】どこまで歩いても宿が... な、ない...

2019年4月19日(金)曇り

 

行程:

ロンセスバージェス 6:30 → スリアイン 15:30 →(タクシー)オバノス 17:00

移動距離:31km (+タクシー30km)

歩数:54111歩

サンティアゴまで:718km

 

さー2日目!

朝はめっぽう弱いけど、6時前にすっと起きられた。筋肉痛もなく、古傷があって心配していた膝もなんともない。マメのできる気配もなし。おー、絶好調や。

 

この日も朝ごはんは食べず、まだ暗い6時半に宿を出た。5分ほど歩いた車道沿いに「Santiago de Compostelaまで790km」の看板がある。ここで、通りかかる韓国人のおっちゃんや、オーストリアカップルに次々と「写真撮ってー」と頼まれたので、なぜかしばらくカメラ係になる。

 

よーしあと790km!(車道だと)がんばって歩こー!

 

白壁に赤い屋根のメルヒェンな建物が並ぶ小さな街をいくつか抜ける。途中、ちょっと道がわからなくなったので、道端に座って地図を見ていたら、日本人の女の子が通りかかった。少しの間一緒に歩く。

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「今日はどこまで行くつもりですか?」と訊いてみた。

「宿がなくなるかもしれないって話を聞いたから、早めにスビリに着きたいんですけど、もしできたらその先まで行きたいなと思ってて。まだわからないです」

「あ、私もララソーニャまで行こうと思ってるんですよね」

「なんか、結構混んでそうで。宿予約してる人も多いみたいですよ」

 

その後、「私歩くの遅いんで先に行ってください」と言われたので、彼女とは途中で別れた。そうかーやっぱイースターだから混んでるのかな?でもスビリにはアルベルゲいくつもあるし、その次のララソーニャは5kmくらいだから、このペースで行けばなんとかなるかな。

 

やがて街を抜け、小川を越えて、

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牧場や 

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森を抜ける道に入った。前を歩くカップルが、バゲットバックパックに横倒しにのっけて歩いている。「その運び方いいですね。後ろから写真撮っていいい?」と尋ねて撮らせてもらった。

 

途中で抜けていく街がいちいちかわいい。あああもうただ歩いているだけで幸せやでー!

 

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3時間ほど歩いたところで、巡礼者でにぎわっているバルがあったので、朝ごはんとトイレ休憩をすることにした。カウンターにはトルティージャとピッチャーに入ったオレンジジュース。おー!これが噂の生絞りオレンジジュースか!飲んでみたかったやつ!

 

トルティージャとオレンジジュースを頼んで、外のテラス席に出た。両方で3.8ユーロ。昨日のオリソンの朝ごはんに比べると格段に安い!し、ボリュームもたっぷり。

 

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トルティージャは作り置きだったので、そんなに期待せずに食べてみると

 

う、うまいーーーー!!

 

スパニッシュオムレツって、こんなにおいしかったっけ?まだあったかいし!おなかすいてたし!五臓六腑に染み渡るぜちきしょー!

 

このバルでトルティージャにやられて以来、私は朝ごはんは宿ではなくバルで、あればかならずトルティージャを頼む子になりました(ハイカロリー!)

 

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Bar Dena Ona

 

おいしい朝ごはんにありついて、ご機嫌で歩いていると、SJPPで一緒に受付を済ませた韓国人青年、ワンくんに会った。足が痛くなってきたからスビリに泊まるつもり、という彼と、そのまま一緒に歩く。スビリでランチ食べない?と誘われたけど、ついさっきトルティージャを食べたばかりでおなかすいてないし、早めにララソーニャに着きたかったので、私は街にも入らずに、スビリはスルーすることにした。

 

...なので、12時前の時点でもはやスビリに空きベッドはなかった、ということなんか知らなかったよ!

 

ワンくんと別れて快調に進む。林を抜けるダートの小道を、結構でかめのリュックを背負ったうえ、巨大なソフトキャリーバッグをずるずると引きずりながら歩く男性がいた。数歩進むたびに、重そうなキャリーは倒れまくっている。オフロードでそのキャリーひきずるのはしんどいやろ。

 

私は人見知りなのだけど、カミーノではできるだけ、出会った人にはひと声だけでも声をかけようと決めていた。そーいう私にとって「ブエン・カミーノ」ってのはとてつもなく便利なことばだ。でもこの人は、エアビーかなんかに行く旅行者だろうから、ここは「ブエン・カミーノ」じゃないよな、と思って

「荷物でかいね!運びにくそうだけど、大丈夫?がんばって」と声をかけた。

「ありがとう。こんな道だとは思わなかったよ。まあ、でも歩くしかないよね」

 

 

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スビリから5kmだし、アップダウンもそんなにない割には、ララソーニャまでは結構長く感じた。14:00ごろどうにかララソーニャに着く。街の中心にあるバルは、ランチを食べる人でにぎわっていた。まずはベッド確保!と公営アルベルゲの方に歩いて行くと、若めの男子とすれ違った。

「今公営に行ったけど、リノベーションでクローズしてたよ」

まじか。

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泊まりたかったわララソーニャ!

じゃあほかの宿を当たろうと、さっきのバルまで来ると、若め男子の知り合いらしいコリアン男子が声をかけてきた。

「ここのアルベルゲはどこももう空きがないよ。最後のベッドは、さっき僕が取っちゃったんだ」

まーじーかー!

 

想定外。スビリで泊まる人多いから、ララソーニャなら余裕と思ってた...まさか公営がクローズとは...そりゃ他の宿もなくなるわな。

 

(実はスビリの公営もクローズしていた...と後で知った)

 

しかたがないので、先に進むしかない。この先は小さなアルベルゲがぽつぽつあるだけだけど、どこかしら空きはある...よね...

 

とりあえずバルでお手洗いを借りて、ちょっと速足で次の街を目指す。20分ほど歩いたところで、気が付いた。

 

トレッキングポール忘れたー!

 

さっきのバルのトイレに置いてきた!うわー、今から戻るのめんどい。でもさすがに2日めで失くすのは悲しすぎる!

 

さらに速足でララソーニャに戻り、ポールを取り戻して先を急ぐ。なんという時間のロス。はーさすがにしんどなってきたわー。

 

4km歩いて、アルベルゲが1軒あるだけのスリアインに着いた。中庭のカフェで巡礼者たちが和やかにビールなど飲んでいる。どうか、ベッドありますように、と願いつつ、アルベルゲに入ると

「満室でーす」

まーーーじーーーかーーー!

 

はーーー、もー今日は歩きたくないよー。どこまで行けば宿あるの?あー素直にスビリで泊まっとけばよかった...

 

中庭にへたりこみ、マップとアルベルゲのリストを取り出してどうしようか考えていると、ワンくんと、さっき遭遇した巨大キャリーの男性が現れた。

 

「あれ?ワンなんでここにいるの?スビリで泊まるんじゃなかったの?」

「結局ララソーニャまで行ったけど、宿がなくてここまで来たんだ。まだベッドあるかな」

「ないよ。満室だって」

「まじでー!?あー...」

 

そして、驚いたことに、旅行者だと思っていた巨大キャリー全身刺青男(疲れ果ててTシャツを脱いでいた)は、SJPPから歩いてきているというフランス人巡礼者だった。

 

!!!!

その荷物で、ピレネー越えたんかい!

つか、その荷物800km引きずるつもりだったんかい!

 

さらに一人、両腕にがっつりタトゥーのはいった、がたいのいいおっちゃんが現れた。ロシア人だという。宿なし4人組は、急遽対策会議を開いた。

 

 「しかたない。不本意だがタクシーでパンプローナまで行こう。パンプローナならどこかしらに宿はあるだろう」

「そうだね、それしかないね。じゃあ、行く前にどこか電話で予約しといたほうがいいんじゃない?」

パンプローナは大きな街だから、着いてから探せばなんとかなるはずだ。ペレグリーノは、宿の予約はするべきではない!」

「でも、着いてからあちこち探すのも大変だよ」

 

とりあえずパンプローナまでタクろう、と決めたところで、中庭の向こうのほうでずっと電話をしていた、女性の巡礼者がこちらに来た。

 

「もうパンプローナのアルベルゲも、どこもいっぱいよ。私さっきからずっと電話で空いてるところ探してたの。どうにか、オバノスって街に空きがあったから、そこを予約したわ。あなたたちも、今すぐ電話すればまだ確保できるかもよ」

 

おばのす?どこやそれ?

地図で見てみると、ここから約30km先の街だった。つか、もうほぼ2日後に行く予定のプエンテ・ラ・レイナ

 

さんじゅっきろー?そんなに進まないと宿ないのかよー!

 

 私:「あーもう素直にスビリに泊まっとけばよかったー!今からスビリに戻る?」

ロシアン:「何言ってる!ペレグリーノは常に前に進み続けるんだ!ペレグリーノは決して道を戻ったりしない!そんなのはペレグリーノとは言えない!」 

ロシアンおっちゃんのペレグリーノ精神はアツいw

キャリー:「あのさ、そもそも、スビリにももう宿ないから。僕はもともとスビリに泊まるつもりだったんだ。でも、見つからなくてここまで来たんだよ」

ワン:「ねーぐずぐずしてる間に、オバノスの宿もなくなっちゃうかもよー!」

 

ではノーチョイス!ロシアンおっちゃんがオバノスのアルベルゲに電話をしてくれた。4人まだいけるらしい。助かったー!

 

しかしここで巨大キャリー男がキレた。

 

「僕はパンプローナでタクシーを降りる。もう先には進まないよ。今日の宿がどうにかなったところで、この先ずっとこんな調子が続くのは耐えられない。巡礼はもう中止だ。飛行機でフランスに戻るよ!」

 

...うん、その方がいいかもね。何がそんなに入ってるか知らないけど、荷物1/3くらいに減らして出直したほうがよさそう...

 

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宿なし運命共同体、ワンくんと熱血アレックス。

結局4人でタクシーに乗り、巨大キャリー男をパンプローナで降ろして、ワンくんとアレックス(ロシア人)と私はオバノスに着いた。

「明日はどうする?もー明日の宿も確保しといたほうがいいよね?」

「そもそも、明日はどこからスタートするの?」

全行程を自分の脚で歩きたい、スキップはしたくない、という3人の意見は一致し、私たちは翌朝、またタクシーで30km、スリアインまで戻ることにしたw。そこから歩き直し、翌日は今日泊まるオバノスより少し手前の街、ウテルガに宿を確保。

 

はー長い1日だった...

でもまあ、どうにかなるのがカミーノ。

 

【本日のアルベルゲ】Usda(Obanos) 9ユーロ

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大部屋にずらーりと2段ベッドが並ぶアルベルゲ。オバノスは住宅街っぽい新しい街だし、プエンテ・ラ ・レイナから3kmくらい手前にあるので、ベッド確保には穴場のとこかも。

 

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