カミーノ日記2019:スペイン巡礼、フランス人の道780km + 120km

2019年4~5月、カミーノ・デ・サンティアゴ、フランス人の道を歩いてきました。ブログ内の情報はすべて2019年5月~6月時点のものです。

【Day 18: Población de Campos - Carrión de los Condes】「会うべき人」に会えるカミーノ、そして響き渡るソーラン節

2019年5月5日(日)晴れ

 

行程:

ポブラシオン・デ・カンポス 7:50 →  ビリャルメンテロ・デ・カンポス ビリャルカサル・デ・シルガ → カリオン・デ・ロス・コンデス 13:30

移動距離:15.9km

歩数:29050歩

サンティアゴまで:405km

 

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地図を見ると、今日のルートは2手に別れている。国道沿いに沿って進むルートと、少し大回りにはなるけど、川沿いの道を進むルート。ポブラシオンを出てすぐ、右にそれると川沿いの道に出る。

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川沿いを進もうと思っていたけど、またもや分岐点を見逃し、結局国道沿いを進むことになった。学習しないな私...

 

1時間ほど歩くと、ビリャルメンテロ・デ・カンポスという村にバル併設のアルベルゲがあったので朝ごはんタイム。

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おお、ニワトリさんが走り回っておる!

例のごとくトルティージャ朝ごはんを食べていたら、快活な女性が入ってきた。一緒にコーヒーを飲んでいいかしら?と話しかけられたので、どうぞどうぞ、と向かいに座ってもらう。60代くらいで、ぱーっと周りを明るくする、華のある感じの人だ。オランダ人で、名前はリナ。昨晩はこのアルベルゲに泊まったという。

 

「このアルベルゲ最高よ!スタッフはみんな親切だし、ゆうべいただいた晩ごはんは、食べきれないくらいあったし、今まで食べたなかで一番おいしかった!裏庭には動物もいっぱいいるの。ゆうべは、裏庭のキャビンに泊まったからゆっくりできたし。あとで、庭に行ってみない?」

 

ということで、リナに案内されて裏庭へ。

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うおー幸せそうだなあ...

 

バルに戻ったところで、オンタナスで出会ったニヒルなロン毛アメリカ人が入ってきた。川沿いの道を通ってきたという。ということは、ここから行けるってことやね。そういえば、彼の名前訊いてなかったな。リナはしばらく彼と立ち話をしていて、一段落したところで尋ねた。

 

リナ「で、あなたはどこから来た人?」

ロン毛男「...................トラブルから脱けてきた...ってとこかな.........(決め顔)」

リナ「........................................(そんなんいらんねん)」

 

彼は空気を読んで「あ、いや、カリフォルニアだよ」と付け加えた。キメキメに決めたいのにキメきれず。残念w

 

リナがザックを担ぎながら私に言った。

「私も、川沿いの道を歩きたいんだけど、方向音痴だから不安なの。よかったら一緒に行かない?」

 

私も方向音痴だからあんまり頼りにならないけど、一緒に行きましょう、ということでリナと一緒にバルを出た。アルベルゲの裏手に行けばいいと言われたけど、裏手に行く道ってどれだ?出て30秒で迷ったぞw

 

「おい、そっちじゃねーよ!」と、ロン毛男がバルから出てきて道を教えてくれた。方向音痴2名の道行き、先が思いやられる...

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ともあれ、車道から離れた道に出た。川を望めるわけではないけど、オフロードで人もいないし、気持ちいい。

 

リナはオランダの大学で働いていて、35歳の双子の息子さんがいるという。1人は写真家、もう1人はメディア関連のフリーランサーで、2人とも海外で働いている。だんなさんとは結婚して37年。とても仲がいいけど、だんなさんはそう旅好きというわけではないので、しょっちゅう一人旅をしているらしい。

 

「彼とは趣味が違うから、別々に行動することも多いけど、誰より私のことを理解してくれて、サポートしてくれるの。最高のパートナーよ。大学の仕事も大好きだし、息子2人も好きなように生きていて仲がいいし、私は、自由を愛するハッピーなオランダ母ちゃんってところね」

 

いいなあ。そのハッピーオーラが全身から放たれてる気がするわ...

 

「で、あなたには誰か大切な人はいるの?」

 

え、急にそう来る?まあ、あるよねいろいろそれなりに。リナに訊かれると、なんだかいろんなことを全部話したくなった。ついさっき出会ったばかりの、見知らぬ人なのに。あのね、私は、この道を歩いている間に頭を空っぽにして、忘れられないけど忘れなきゃいけない人を、忘れたいんだよね。歩きながら、リナにぽつぽつと話す。ひとしきり話し終わると、リナが言った。

 

「そう。あのね、ここはカミーノだから、私も本当のことを話すわね」

 

リナは、この幸せな家庭を築く前にあったことを話してくれた。こんなハッピーオーラを振りまいてる、パワフルで明るい彼女にも、辛くて苦しい日々があったんだって。

 

どうしてリナがいきなり私にそんなことを尋ねたのかはわからない。でも私には、抱えていた思いを吐き出したい気持ちがどこかにずっとあったんだと思う。たまたまここで出会ったリナが、どういうわけか、そのきっかけを与えてくれて、さらに自分の体験を話して、私に共感してくれた。

 

カミーノを歩いたことのある人がよく言う、「カミーノは、会うべき人に会わせてくれる」という台詞。これか!こういうことか!なんだかそれを実感した。おそるべしカミーノマジック。ありがとうリナ!

 

川沿いの道が車道に合流したあたりで、ニヒルロン毛男に再会した。ここからしばらく3人で歩いて行く。

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ビリャルカサルという街に入ったところで、道沿いにすてきなバルを発見し、一休みすることにした。バリスタはにこやかなお兄さん。古い建物をリノベーションしたバルで、店と自分の仕事に誇りを持っていることが伝わってくるような、すてきな話し方。

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ケーキと、ベーコンのエンパナーダがどちらもおいしそうで迷っていると

 

「どっちもおいしいけど、このエンパナーダは自家製で超おすすめ!」

 

と言うのでエンパナーダを。思ったより大きなピースで、温めてくれた。おひさまがさんさんと注ぐ外のテーブルでいただく。

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正面の蔵はミニギャラリーになっている。

!!!!!!めっちゃおいしいいいいい!しかもカフェ・コン・レチェとあわせて3.8ユーロ。やす!

Palomar Del Camino

 

天気もいいし、年齢も国も違うけど、漫才みたいな掛け合いをしながら歩く楽しい連れが2人いるし、景色はいいし、今日はいい日だなー。こんなに毎日、違う人に会うことってなかなかないよな。

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カリオン見えてきたー!

リナはすでに個室のあるアルベルゲを予約しているというので、街の入り口でリナとロン毛男と別れた。私は街の中心にある、教会に併設のアルベルゲに向かう。受付に行くと、結局そこでまたロン毛男に遭遇w 何回遭遇するねん今日...

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シスターがロン毛男の受付をする。

 

シスター「脚は大丈夫ね?あなたはまだ若そうだし、上段のベッドでいいかしら?下の段は怪我をしている人や、年配の方のために空けておきたいから」

ロン毛男「...できれば下がいいんだけどな。オレだって、こう見えてそこそこ年寄りなんだぜ...」

シスター「......................................(まじ顔)」

ロン毛男「うそうそうそうそうそ。冗談だよ。ごめんて。もちろん上でいいよ。全然問題ない。悪かったよつまんない冗談言って」

 

またはずしとるww

 

このアルベルゲでは、夕方にホールで巡礼者の集いを開くという。せっかくなので参加することにして、それまでの間街ぶらにでかけた。日曜日だからお店はほとんど開いていないけどいい雰囲気の街。緑いっぱいの公園もある。

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街に戻ると、またリナに会った。せっかくなので一緒に遅めランチ。

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リナが、足にマメができかけているというので、五本指靴下を激推ししてみた。もし売っていれば買いたいというので、ちょっと大きめのアウトドア用品屋さんが開いていたから、売っているかはわからないけど、一緒に行ってみることに。ここでまたロン毛男に遭遇w 今日もう4回目やんw ほぼ丸1日一緒にいたけど、私たちはロン毛男の名前を聞いていなかったし、彼も私たちの名前を知らなかった。

 

リナ「そういえば、彼の名前訊いてなかったね」

私「そうだね。...なんかもう、いっそ訊かなくていいような気がする」

リナ「そうね。もうMr. トラブルでいっか!」

 

ということで、ロン毛男はMr. トラブルと命名された。

 

5本指靴下は売り場にはなかったけど、念のため店員さんに尋ねてみた。すると、「あ、トゥソックスね。あるよ!」と、店の奥から5本指ソックス出てきた!あるんかいー!あるならちゃんと並べたほうがいいよ、きっと売れるから!私があまりに激推しするので、Mr. トラブルも5本指ゲット。ほら、売れるやーん!

 

また3人でお茶をした後、リナはアルベルゲに戻り、Mr. トラブルはどっかに消えた。私はアルベルゲの集会に参加。

 

シスターたちがギターを弾きながらカミーノの歌を歌い、全員が簡単な自己紹介をして、そのあと、シスターがそれぞれの国を指定して、母語で歌を歌うという流れ。昨日会ったバルバドスの2人連れやコリアンのスンヨン、お久しぶりのNZ夫妻、ポーラとアランもいた。日本人は、私のほかにひとり。70代くらいのおっちゃんがいた。Mr. トラブルはいなかった。こういうの興味なさそうだもんな。

 

日本が指名されたので、おっちゃんに「曲はおまかせします」と選曲してもらった。おっちゃんは一瞬考えると、「ヤーレンソーラン♪」と突然ソーラン節を絶唱し始めた。え?なんでソーラン節?まあ始まっちゃったので、「はいーはい♪」と合いの手など入れてみる。この、「みんなで歌う会」は初めて参加したけど、なかなか楽しかった。そのあと、教会のミサに参加。

 

夕食は、この日は日曜日でスーパーが開いておらず、あまりまともな食材を買うことができなかったので、個人商店で買ったフルーツとお湯を注ぐだけライスを、手持ちのゆかりとお味噌汁で流し込んだ。食べているとMr. トラブルが現れたので(またかw)、「ゆかり食べてみる?」とあげたら気に入った様子。

 

「なあ、針と糸持ってたら貸してくれないか?」

「いいよ。マメつぶすの?」

「違うよ。服が破れちまって、繕いたいんだ」

部屋に戻って、ソーイングセットを渡した。明日返すよ、と言って彼はまたそのままどこかに消えた。なんか、彼はなつっこいんだか自由なんだかよくわからないw

 

【本日のアルベルゲ】Hostel Parish Santa Maria del Camino 5ユーロ

お隣にある教会のシスターとボランティアさんが運営するアルベルゲ。夕方からシスターのコンサートがあります。参加は強制ではなく任意。せっかくなので隣の教会で行われるミサに参加して、巡礼ムードにどっぷり浸るのもよいかと。大きなキッチンもあります。

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