2019年4月20日(土)晴れ
行程:
オバノス 6:30(タクシー) → スリアイン 7:00 →パンプローナ→ウテルガ 16:00
移動距離:29.1km (+タクシー30km)
歩数:49330歩
サンティアゴまで:689km
今朝は6時半に、スリアインに戻るためのタクシーを予約している。6時には起きようと思っていたけど、目が覚めてスマホで時間を確認すると、すでに6時15分だった。
やばし!
アレックスとワンくんはまだ爆睡している。「起きて起きて起きてー!」と起こして、あわてて身支度をする。
どうにか15分で荷物をまとめ、6時35分に迎えに来たタクシーで、夜明けの風景を眺めながらスリアインに戻った。これまでずっと曇り空だったけど、今日は上天気。フランス人の道の絶景スポット、ペルドン峠を通る日だから、晴れなのはうれしい!
「よし、じゃあウテルガのアルベルゲで落ち合おう。16時までに着かないと、予約がキャンセルされてしまうからな。一番に着いた人がちゃんと3人分ベッドを確保するように。じゃあオレは行くよ」
アレックスはターミネーターばりの力強さで、がしがしと歩き始めた。
朝、あわてて荷物を突っ込んだので、私はちゃんと荷物を詰め直してから歩き始めたかった。
「私、荷物を詰め直してから行くから、ワンも先に行ってー」
「おっけー。じゃあまたあとで」
車道や川沿いの道をしばらく歩いて行くと、道端の岩に腰かけて休んでいる恰幅のいいおっちゃんがいた。「ブエン・カミーノ」と声をかけあい、なんとなく一緒に歩き始める。アンディと名乗るおっちゃんは、南アフリカから歩きにきているとのこと。
カミーノでの会話はだいたい、「どこ出身?」「サンティアゴまで行くの?」「今日はどこから歩いてるの?」から始まる。今朝は当然、昨晩の宿争奪戦の話で盛り上がる。アンディは、昨晩はスビリの体育館で雑魚寝したらしい。
「スビリでベッドにありつけなかった人が15人くらいいたから、街の人が体育館を解放してくれたんだ。近くのゲストハウスが1部屋だけ空いていたから、年配の女性が1人、そっちへ行ったけどね。ありがたかったけど、体育館は床が固くて、ほとんど寝られなかった。結局4時には起き出して、今日は早めに歩き始めたよ」
そういうこともあるのか。ほんと、どーにかなるもんやねえ。
しばらく歩くと、アーチのきれいな石橋が見えてきた。パンプローナの手前にあるアッレという街。メインルートは、石橋を渡って街を抜けるみたいだけど...
「川沿いの公園を抜けていく別ルートがあるよ。ちょっと待って」
アンディが、John Brierleyのガイドブックを調べてくれた。このガイドブックには、ルートについて詳しい説明がある。私が持っていたのは、このガイドブックの地図の部分だけを集めた薄い本で、分岐がどことか、このルートはこういう道、とかいう説明はない。
地図だけの本は軽くていいけど、やっぱ説明があったほうが便利だな...、と、この後もいくつかの分岐点で思った。でもま、これ持っている人が多いから、わかんなかったら聞けばいいよね。会話のきっかけにもなるし。
上のが詳しいガイド、下のが地図だけ。Dutch Editionとあるけど、地図とアルベルゲリストだけで文章はほとんどないし、前書きやちょっとした情報がは6か国語で書いてある。
アンディと一緒に別ルートを通ることにした。何にもない、視界の開けた道を通るのもよかったけど、こういう、地元の人とすれ違うような、生活圏の散歩道を歩けるのもいいなあ...
汗だくで歩いているアンディが、「ちょっと休んでいく」というので、公園の途中で別れて、また一人で歩き始めた。アンディとは、このあとしばらくの間、あちこちで顔を合わせることになる。
公園はカミーノのメインルートではないので、頼みの綱のモホン(カミーノ用の道しるべ)や黄色い矢印はないし、大きな街が近づいてくると、ルートがわかりづらくなる。ときどき、ジョギングや散歩をする人に、パンプローナの方角を確認しながら進んだ。
どうにか迷わずパンプローナに到着。せっかくだから、ちょっと観光でもしようかと思ったけど、今日は16時までにウテルガに着かないといけないので、あまり時間がない。インフォメーションで地図だけもらって、ルート通りにさささっと旧市街を抜けながら雰囲気を楽しみ、バルで軽く朝ごはん兼ランチ(ええ、トルティージャです)を食べるくらいしかできなかった。
旧市街を抜けると、3日前に来たバスターミナルの近くの大きな芝生に出る。そこをまっすぐ行くと、ヤマグチ公園という日本庭園のある公園や、大学があるはず、というのは地図で調べておいた。芝生のわきの道をざくざく歩いていたら、ノルディックウォーキングをしている地元のご夫婦に声をかけられた。
「ねえ、カミーノを歩いているなら、こっちの道じゃないよ」
おー、いつの間にか道外れてたの気付かなかった!
大きな街では、矢印やモホンの代わりに、歩道にホタテのモチーフが埋め込まれているのだけど、それでも道に迷いやすい。この後も、大きな街では気を付けているつもりでも、たいてい迷いまくったw
ご夫婦は、カミーノの正しいルートまで一緒に歩いてくれた。
「ほら、ここから舗道のホタテをたどって行けばいいからね。ブエン・カミーノ!」
あー、またスペインの方の親切が身に染みるー。
パンプローナを抜けると、なだらかな緑の丘に向かう一本道になった。カミーノ!という景色。緑の麦と、菜の花の黄色と、真っ青な空がきれーい!
ちょいちょい、散歩やジョギングをしている地元の人たちとすれ違う。ちょっと街を出れば、こんなすてきな道を散歩し放題なんて、パンプローナの人たちがうらやましくなった。
あとちょっとでペルドン峠、というところまで来たとき、なにやらぶつぶつと一人でしゃべっている声が聞こえてきた。熱血ロシアン、アレックスや!
アレックスはスマホを2台持ち、昨日会ったときから、しょっちゅう動画を撮りながらカミーノを中継している。タクシーで移動している時に
「アレックスはYouTuberかなんかなん?」と訊いてみると、
「いや、家族用だよ。オレには家庭が2つあるからな」と答えが返ってきた。
家庭2つてw
ともあれ、彼は道端に座って休みつつ、また動画を撮影している。
「追いついたよアレックスー!あの峠もうすぐだよね?」
「おー、ミユキ!5分ほど前に、ワンもここを通っていったよ」
「思ったより時間かかっちゃった。オバノスまでは、あと8kmくらい?16時に着くの結構ギリギリかもね」
アレックスを置いて峠を登りきると、オブジェのところにワンくんがいた。いいとこで会ったわー!お互いに写真を撮ってもらいまくるw
写真を撮りあっている間にアレックスもやってきて、めーっちゃ写真を撮らされたw
「撮って撮って撮りまくってくれ!いらないやつは、消しゃーいーんだからな!」
ここから先はずっと下りなので、ウテルガを目指して3人でもくもくと歩く。16時ぎりぎりに、どうにか予約したアルベルゲに着いた。
おー!受付兼バルに、「Six Ways to Santiago」のポスターが貼ってある!ここロケ地だったのかな。
「はー、とりあえずビールだビール!うなせるべっさ、ぽるふぁぼーる!」
スペイン語はわからない、というワンくんだけど、「ビールください!」だけはめっちゃスムーズに、ナチュラルに口から出てくるw
アルベルゲ併設のバルでは、スビリで「もうアルベルゲないよ」と教えてくれたコリアン男子や、昨日スリアインで作戦会議をしている時に顔を合わせたコリアンボーイズ2人組と再会。コリアンボーイズ2人組は学生で、敬虔なクリスチャンらしい。片割れがジャルジャルの福徳にそっくりなので、ディナーのときにジャルジャルの写真を見せたりして、無邪気に盛り上がる。
ディナーのあと、中庭でコリアンボーイズと話をしていたら、10歳くらいの少年少女が、「ダンスをするから見てよ!」と、突然デュエットダンスをし始めた。すごく仲がよくて、きょうだいか友達かと思っていたら、家族で別々に来ていて、カミーノで知り合ったらしい。このあとも、ちょいちょいいろんなところで、このヤングカップルを見かけることになる。小さな恋の物語的な。はー、これがカミーノの出会いってやつかw
だんだん顔見知りが増えてきて、楽しくなってきた。
【本日のアルベルゲ】Camino del Perdón 10ユーロ
大きな中庭とレストランがある私営アルベルゲ。ペレグリーノメヌーは14ユーロと少々お高めながら、たくさんの種類から選べるし、デザートも自家製でとてもおいしかった。中庭もかなり居心地よい。各枕元にコンセントあり。