2019年5月12日(日)快晴!
行程:
オスピタル・デ・オルビゴ 8:30 → ビジャレス・デ・オルビゴ → サンティバニェス・デ・バルデイグレシアス → サン・フスト・デ・ラ・ベガ → アストルガ 14:30
移動距離:17.2km
歩数:33922歩
サンティアゴまで:263km
Alberge Verde、朝も、おいしいパンに2種類のミューズリをいただきながら、とても心地よいひとときを過ごせる。ゆっくりと朝ごはんを食べて、支度をして外に出ると、いつも朝早く出発するコリアンガールのアリシアが、まだ陽だまりの椅子でくつろいでいた。
「アリシア、今日はずいぶんゆっくりだね」
「うん。ここがあまりにも気に入ったから、もう1日泊まることにしたんだ」
いやー、わかる。私ももう1泊してまたあのごはん食べたいわ!アリシアはいつもにこにこしているけど、昨日も今朝も、ことのほか幸せそうで、心からくつろいでいる様子だった。
「オスピタル・デ・オルビゴを出ると、車道沿いの道とオフロードに分かれるんだけど、オフロードを行くといい。行き方はすぐわかるから」と宿の人に言われて、もちろんそっちを目指したんだけど、また曲がる場所を間違えた。違う方向にずいぶん歩いて、1時間くらいムダにしてしまった... 我ながら方向音痴がひどすぎる...
レオン以降、飛行機雲をやたら見るようになったな。
1時間もしないうちに(迷ったから2時間かかったけどw)、ビジャレス・デ・オルビゴに着いた。
一番上、インスタに貼った写真の街。ここでバル休憩をしていたら、レオン以来の仏紳士ジェラールと、コリアンガールのスンヨンに遭遇。ジェラールは初めて会ったのが4日目のマニェルで、そこからコンスタントに再会している。ペースが同じなのかな。前半よく会っていたアンディやアヤさん、パトリシアには、途中からすっかり会わなくなってしまった。スンヨンは、大きな帽子にサングラス、それにスカーフをぐるぐる巻きにして完全日避け仕様で歩いている。
空が青くて、緑が濃くて、風もないし気持ちいいなー今日。
しばらく街のない区間をもくもくと歩いていると、寄付制の休憩所があった。
お手洗いはなさそうなので素通りしようと思ったけど、ハンモックあるやん!まあ急いでいないし、トイレもしばらく大丈夫そうだから(もうすべてがトイレ基準になる...)、オレンジを1ついただいてハンモックに寝っ転がることにした。
なんやこれ!サイコーやないかーい!
だめだ、「動けないトラップ」にはまってしもうた...
30分くらいうだうだしていると、あれ、ぐるぐる巻きの人が通っていく...
あれ?スンヨンかな?こんな天国、通り過ぎちゃうのもったいないよ!
「スンヨーン!スンヨーーーン!」
と声を張り上げた。ぐるぐる巻きの女性が「あたし?」みたいに首をかしげつつこっちに来た。スカーフをとると、スンヨンじゃない...台湾女子キャリーだった。キャリーもめっちゃぐるぐる巻きやん!間違えてごめん。あー、でも知ってる人でよかった...
もーほんと動けなくなりそうだったので、重い腰を上げて歩き始めようと道に出ると、アジア系民族衣装を身に着けたプロ旅人みたいな人たちが3人、店番をしていた。うち1人は東洋系の女の子で、あれ、日本人かな?と思っていると、向こうから日本語で声をかけられた。
「日本の方ですかー?」
彼女は旅に出て1年半、このなにもないところで野宿して3日目になるらしい。
「なんか居心地よくて、動けなくなっちゃって。フランス人の道も、歩きだしたのはもう1か月以上前なんだけど、この調子じゃいったいいつ着くんでしょうねーははは」
...さすがプロ旅師。
...ほんで、ほんまもんの「動けないトラップ」じゃないかここ...
オンタナスで会ったシアトル兄さんが「アストルガはすてきな街」と言っていたから、楽しみにしていたところ。ガウディ建築とチョコレートが有名で、「チョコレート博物館」もあるんだって。...でも残念ながら今日は日曜日...
きれいなアルベルゲだなー。受付を待っている人が何人かいたので、最後尾に並ぶ。前の人、松葉杖ついてる。脚痛める人結構いるんだな... ん?この青いバンダナ... あ、ユニクロのUVパーカー...
「レネー!!!」
フロミスタの手前で、脚をひきずってたレネーだ!ひさしぶりに会ったけど、悪化してるやん!松葉杖ついて、だいじょぶなんか!?
「いやー、ちょっともう限界。ここで病院に行って、できれば2~3日は休もうと思ってるんだ」
それがいいねー。でも、その脚でよくここまで来たよね。えらいー!
公営のアルベルゲは普通は連泊できないけど(体調が悪い場合などは例外的に受け入れてもらえるけど)、アストルガは問題なく連泊できるようだった。よかった。
荷物を置いて、シャワーと洗濯をして、着替える。左ひざの虫刺されは、ぜんぜんよくなる気配がない。膿がサポートタイツにつくから、歩いているときは絆創膏を貼りまくっているけど、少し乾かそうと、絆創膏をはがしてワンピースを着た。
テラスで、道中で会った台湾女子キャリーに遭遇。夕食を一緒に作ろうと誘われた。作りたい!でも、調べてみると街のスーパーは日曜で全部休みだった。スーパーのある街に来るたびに日曜に当たって、なかなか自炊チャンスがない。しかたないから、じゃあ夕食を一緒に食べに行こうと約束した。キャリーはあまり街歩きをせず、アルベルゲでのんびりする派なので、時間だけ決めて私は街歩きに。
チョコレート博物館行きたかったな...
ほんと、すてきな街... おいしいジェラート屋さんもあった。散歩をしていたら、知った顔にも次々に会った。スーさんにテレサ、スンヨン、Mr. トラブル、それにギター弾きのアンドレアスチーム。彼は途中から、スペイン人のソーニャと、カミーノで出会ったらしいルクセンブルグガール&仏青年カップルの4人で一緒に歩いている。
チョコの街だから、チョコレートも買っておこう。
街と公園を散歩して、アルベルゲでキャリーと、その場に居合わせた韓国人青年と落ち合って、適当にみつくろったレストランに入った。
メヌーを食べ終わって、流れから虫刺されの話になり、スカートのすそをめくってキャリーに患部を見せた。
「ちょっと、なにそれ!それ、ほっとくのはよくない!薬がいる!薬局に行こう!」
自分では毎日見て、見慣れていたせいか、そんなにひどいと思っていなかったんだけど、確かによくよく見るとこれはちょっとひどい... 手のひら大にどす黒く腫れあがり、膿も流れ出ている。汚い...
キャリーと韓国人青年が一緒に薬局についてきてくれた。塗り薬を買おうとお店の人に訊くと、それはすぐ病院に行ったほうがいいと言われた。
えー... 病院...そんなひどくなってた?やってもーたかな...
幸い、救急病院が街はずれにあって、日曜の夕方でも診てもらえるらしい。あー、ひどくなったのがアストルガみたいな大き目の街でよかったな...
キャリーが病院までついてきてくれるという。優しいいいいい!でも歩いて30分くらいあるし、全部でどれくらい時間がかかるかもわからない。キャリーの時間をもらっちゃうのは申し訳ない。「ひとりで大丈夫」「でも心配だから!」の押し問答を繰り返し、「戻ったら報告するから」ということで宿にいてもらうことにした。
「帰ってきたら絶対連絡してね!」って。
ほんといい子だなーキャリー。ありがとう。心強い。
ということで、ひとりでぽてぽて歩いて病院へ。そういえば、友達が昔、ダニにかまれて首が動かなくなって、コルセットはめることになったのを、今更思い出した。感染症起こして、一歩間違ったら、命の危険もあったって言われるくらいやばかった。急に不安になってきた... 虫刺され、甘く見ないほうがいい...
病院に到着。日曜の夕方だからか、ほとんど人はいない。受付で虫刺され跡を見せて、診察してほしいと英語で伝えると、スペイン語がわかるか訊かれた。
あうー、わかりません...
Google翻訳でどうにかなるのかなと思案していると、受付に青年医師が現れた。
「こんにちは。どうしました?巡礼の人?」
英語通じるー!助かったー!そして、なんか爽やかなイケメン兄さん!
すぐ診療室に通してくれ、いつ刺されたか訊かれた。
「それが、どこで何に刺されたか、全然わからないんです。ここ3~4日でめっちゃ腫れてきて...」
「ふーん... あー、これは、感染症起こしてるね」
げげげ。病院に来てよかった... 薬局のお姉さん、キャリー、病院行けって言ってくれてありがとう...
「たぶんだけど、蜘蛛じゃないかな」
「蜘蛛ー!?」
「うん、たぶんね」
「うげええええ!蜘蛛、めっちゃ嫌い!」
思わずそう言うと、イケメン医師はハハハと笑った。明るく、ただの雑談みたいに楽し気に話してくれるので、不安な気持ちがどんどんふっとんでいく。
「痛みはない?じゃ、抗生物質出すからそれ飲んで。8時間おきに10日ほど飲んでね」
「あのー、歩くの控えたほうがいいとかは...」
「あ、それは大丈夫。普通に歩いていいよ。ただし、薬飲むのは絶対忘れないで。それはすごく大事なことだからね」
イケメン医師はなにやら塗り薬をぬって、絆創膏を貼り、処方箋を書いてくれた。
「抗生物質を10日分、炎症を抑える薬を5日分出しておくね。これを飲み終わるころには、よくなってるはずだよ」
塗り薬は必要ないようだった。まだ開いている街の薬局を調べてくれて、じゃあこれで終わりね。お大事に、と診察終了。
あーーー病院に来ておいてよかった!
そうだ、旅行傷害保険を請求するのに診断書もらわなきゃ。実質、処方箋書いてもらっただけだけど、時間外診療だから結構かかるかな、お金足りるかな、カード使えるのかな... とちょっとどきどきしながら、「あのー、治療費は...」と尋ねてみた。
「かからないよ!保険に入ってるでしょ?」
「え?いえ。スペインの医療保険には入ってないです。日本の旅行傷害保険に入ってるだけで...」
「...あ、そっかあ...うーん...」
イケメン医師、3秒考えてこう言った。
「いいや。気にしないで!」
え?気にしないでって、それですんじゃうの?えーそんなんでいいの?
ちなみに...
「巡礼者は病院に行くと無料で診察してもらえる」というウワサが一部で流れているようですが、巡礼者は診察無料なんてプログラムはないですよ。治療費はかかります。旅行傷害保険には入っていってくださいね。
(日本人以外でも「治療はタダ」と思い込んでる人は割といるみたい)
私の場合は、結局、ご厚意で無料で診察していただいてしまいましたが...(診断書めんどくさかったのかしら...)これはあくまでご厚意です。
「じゃあ、薬飲むのは忘れないでね。8時間おきだからね。ブエン・カミーノ!」
受付で処方箋をもらって、受付のおばちゃんにも爽やかに送り出された。アストルガの病院、なんていいところ!
ちゃんと診てもらったことで、気持ちも軽くなり、教えてもらった薬局に行った。処方箋を見せると、そこそこ大きな箱に入った薬が2つ出てきた。えーと、薬はいくらなのかな。現金減らしたくないからカードで払うことにする。
カードリーダーに入れて、金額を確認して目を疑った。
2.51ユーロ。
にーてんごーいち?薬2箱で?25ユーロじゃなくて?やっす!安すぎませんかこれ?
「え?2.51ゆーろですか?」思わず確認した。間違いないというので、「あ、じゃあ、これくらいだったら、キャッシュで払います...」と現金で支払う。
薬ってこんな安いの?びっくりするわ。だいじょうぶ?効くんかいな。
もちろん、薬はちゃんと効きました。買った薬を飲み切るころには、膿もなくなり、腫れもちょうど引いた。
イケメン医師すごい!すばらしすぎる!ありがとううううううう!
さすがに薄暗くなってきたなか、アルベルゲに戻る。Mr. トラブルとレネーに、診察について軽く報告(レネーにも「診察無料だった?」と訊かれた)。レネーは明日自分も病院に行くから、いい病院だった!というのを聞いて安心したみたいだった。キャリーからもメッセージが入り、「戻ってきた」と伝えると、部屋まで下りてきてくれた。いろんな人が心配してくれて、ありがたいなあ。ひとりで歩いているけど、出会ったいろんな人が助けてくれる。
【本日のアルベルゲ】Albergue de peregrinos Siervas de María 5ユーロ
5フロアくらいある大きなアルベルゲ。全体的に明るいし清潔だし、キッチンは大きいし(使わなかったけど)なんといってもテラスからの眺めがとってもいい。アストルガはもう1泊してゆっくりしてもよかったな...
これを書いている1年後のいま、お世話になった受付のおばちゃんとイケメン医師はじめ、アストルガの病院のスタッフもたいへんな日々を送っているのだろうなあと思うと胸が痛む。どうか、みなさんが無事で、そしてゆっくり休める日が1日も早く来ますように。